幻想世界神話辞典 〜
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トリスタン Tristan >>関連項目一覧ケルトの伝承の英雄。英語トリストラムとも、ドイツ語トリストラントともいう。元のピクト人の言葉でDrustan。 名前は「悲しみの子」の意。あるいはDrustにはriotふしだら、放蕩、騒ぎ、tumult騒ぎ、心の乱れなどの意味がある。 ケルトとはいうものの中世にはヨーロッパで広く人気を博した物語として流布された。 コーンウォールに実在したかもしれない人物。古くは12c世紀のフランスのものがある。マビノギオンにはこの物語の原型と 思われるものもあるという。 物語ではイズー(イゾルデ)によるゲッシュ(魔術的誓約)によりイズーを愛さなくてはならなくなる。 フランスの物語では媚薬によるものにかわっている。 英雄物語らしく様々な戦いが描かれる。叔父の王の危機には敵将モレオール(魔法の剣を持つという)と、 貢物をよこすかどうか、 小島で一騎討ちする。ついたとき、自分の船を壊して、相手がなぜかと問うと、 生きて帰るものは一人だからそちらの一隻あれば足りるという。まるで武蔵と小次郎の巌流島のようである。 この戦いで、モレオールは討ち果たすものの、モレオールの毒槍の一撃をうけたため、王の元へ帰ったあと 一人船に行く先をまかせ旅にでる。いきついた先がイズーの国で、トリスタンは身分をふせ、治療の技にすぐれた イズーの治療で一命をとりとめる。 トリスタンが仕える王のもとを離れ、イズーと森で暮らしてる時につくった 「無駄なしの弓(必中の弓)」は人間でも獣でも狙った場所に 必ずあたるという。 思いがけず、国の仇敵ともいえる男を救ってしまったイズー。後に語られる。 「恋の大歓喜、大悲哀を嘗めて愛しあい やがては同じ日のうちに 彼は彼女のため、彼女は彼のために、死んでいったのかを」 「トリスタンとイズー」に関する物語については12c世紀頃の成立とされるが、 様々な版、詩により物語が断片的に伝えられている。 ペディエ編著のもの(岩波文庫邦訳)では以下のものを参照している。 ・ペルール(Beroul)版(3000行程度) ・トマ版(3000行程度) ・作者不詳(1500行程度) ・アイルハルト・フォン・オベルク版 ・ゴットフリート・フォン・シュトラスブルク版 ・13c世紀の教訓詩「恋人の栞」 ・フランスの小詩 ※クレチアン・ド・トロア、ラ・セーブル版は消失。 トリスタンは素性を隠し、イズー姫のもとで治療をうけるが、治って正体がばれる前に自分の国に帰った。 国ではトリスタンを良く思わない者たちがトリスタンを迫害し無理難題を おしつける。王のためにイズー姫を手に入れてくるようにしむける。 再びイズー姫の国アイルランドへ行く。 トリスタンの龍退治 イズーの国では龍がいて、倒したものに黄金の髪のイズー姫を褒美にくれるという 20人の騎士が命を落とした 真っ赤な目は炭火のよう、頭は大蛇の形、額に2本の角、耳は長く毛を生やし 爪はライオンのよう、尻は蛇、鱗を生やした鷲のような体。 鱗は強靭で槍は砕け、腹も硬く剣撃もきかない。 爪は盾を折った。 鼻から毒気を吐き、鎧の金属は黒く変色した。 トリスタンは口の中へ剣をつき入れ心臓を2つに裂いた。 倒した証拠に舌を切り取ってとっておいたが 舌から滴る毒汁に全身をおかされ倒れてしまった。 その間にイズーの国の家臣、赤鬚のギャランゲランという男が来て、龍が死に、龍を倒したらしい男も死んでいるらしい のをいいことに龍の首を切り落とし自分が倒した、と王のもとへいった 王は信じてなかったので要求を査定するため3日間の間に家臣に王宮に集まるようにふれた。 イズーは真実を知るべく、龍退治の現場に。馬具の取り付け方の違う馬の死体を見て 異国の勇士が龍を倒したと思う。さがすとトリスタンが倒れているのをみつけ 息があるので治療する。 この美男の勇士がギャランゲンを打ち倒せるだろうと喜ぶイズー。 武具の手入れをしようと鎧や剣をみる。見事な武具だが、剣には刃こぼれがある。 もしや、とモレオールの頭から抜き取った剣の破片をもってくるとぴったりあわさる。 ここにいたり、この勇士が仇敵トリスタンと知る。 体の自由のきかない中でトリスタンの知略は、私はあなたに2度命を救われている。 あなたには私の命を奪う権利がある。しかしそれであなたは何をえるのか、 私を殺してギャランゲランと寝床をともにしながら、 私の命をうばったことを思いだすといいだろう、と。 イズーは考え直し、仲直りのしるしの肩へのキスをする。 かつてモレオールが貴国から乙女を奪おうとしたように、私を得てはした女にするためにきたのか、と。 違う、不思議なことがあり、燕があなたの金髪をもってわが国にきた。 この髪の乙女を探しにきたのです、と。 イズーは王に、ギャランゲンのウソを暴く勇士がいるが、その者の過去の罪を許して くれることを約束してください、という。 諸侯も約束するようすすめる。王が約束したあと、紹介された勇士はトリスタン。 モレオールとの決闘で覚えているものが騒ぎ出す。 しかし、王が許しの口付けをしたため騒ぎは収まる。 トリスタンが龍の舌をしめし、決闘をもちかけるがギャランゲンは勇気なく罪を覚悟した。 トリスタンはイズーを自分のマルク王の妃にむかえるためにきた、と宣言する。 イズーは悲しんだ。トリスタンは自分が手にいれるためにきたのではなかったのだ。 しかし諸侯の前で約束はかわされた。 イズーの母の王妃は、姫に使えるブランジァンにぶどう酒をわたす 姫が異国の王に愛されるようにしなければならない。 マルク王と姫が二人の時にさしだし飲むようにするのだと。神草を調じたこのぶどう酒は 一緒に飲んだ二人を身も心もひとつにし、生きている間も死んだあとも永久に愛し合わせるのだ と。 イズーは生まれた国を離れ、自分のものにせず獲物のように敵国に連れ去るトリスタンを 恨みさえしていた。 ところがブランジァンがいないとき、イズーを慰めようと言葉をかけるトリスタン。二人はのどが渇き 例のぶどう酒をのんでしまう。 そこへ戻ってきたブランジァン。二人は恋と死をのんでしまった、と嘆く。 そして二人は自分の心に悩んだ のちに、トリスタンは私はあなたの臣下で、王の妃だ、というが イズーはあなたが私の殿なのだ、といい、結ばれてしまう。 のちにイズーはマルク王の妃になるが、最初の夜に、その身を委ねたのはブランジァン、 彼女が自ら身代わりとなり処女をささげ、そして夜ごとに身代わりとなった。 直接みたわけではないが、船上でのことを疑い、トリスタンをおとしいれようという 4人の悪人臣下の讒言 などもありながら、二人は密会したり、その場を見つかっても奇跡的にうまく言い逃れたりを くりかえしながら、とうとう二人は謀にかかり、二人会いたくなるような場面をつくられ、 見つかってしまった。 そして結局トリスタンとイズーは二人して落ち逃れていくことになる。 参考資料 関連項目一覧
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