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コウノトリ こうのとり 鸛 white stork >>関連項目一覧


こうづる、とも。「こうのとり」は人間の生活圏でもよくみられる鳥。 そのせいか神話伝承的な言い伝えがアジア、ヨーロッパでみられる。
日本では姿がタンチョウに似るため「松上の鶴」として描かれたりした。
中国や日本では水田などで餌をとり、人家近くでも巣をつくる。松の木のてっぺんに営巣する。
江戸時代には浅草の観音堂や市内の大きな寺院の屋上で営巣していたという記録がある。
ヨーロッパでは亜種のシュバシコウがみられ、こちらは人家の屋根や煙突の上に営巣するのが普通で、 毎年越冬地から同じつがいが同じ家に帰ってきて繁殖する。
アジア、ヨーロッパともに工業化などの影響で数が減っているという。日本では残念ながら野生のコウノトリは1971年絶滅した。
中国、ロシアや東ヨーロッパにはまだ数が残っているようだ。中国、ロシアから冬鳥としてまれに日本に渡来する。
*生物学的な記述は最後に述べる。

伝承としては以下のようなものがある。
・ヨーロッパ
 一家に幸運をもたらす、赤ん坊を連れてくる。
 そのため人々に非常によく親しまれ、またたいせつにされている。
・北ヨーロッパ(ドイツ他)  赤子はコウノトリによってもたらされる。
 沼、池、泉などの水の中、あるいは岩山の洞穴から赤子をみつけてくるという。  もとはコウノトリが、これらから生まれる赤子の霊魂を運んでくるという信仰であったらしい。 ・ドイツ
 コウノトリが家の上を飛ぶのは赤子が生まれる前兆である。
・アルザス
 ドイツとフランスの境にあるアルザス地方もコウノトリを特別視する。
・デンマーク、オランダ他
 屋根に巣をつくると縁起がよいといって喜ぶ。
 逆に、巣を離れるのは悪疫や大災害の前触れであるという。
・中国
 コウノトリは群れて飛んで雨を降らせるという。
 コウノトリの子をとると日照りになるといって大切にする。
・日本
 縁起物 ツルが松の枝に巣をつくっている図柄
 これは生態上コウノトリを誤解したもので古くはコウノトリを縁起のよい鳥として考えていたと推定される。
・千葉県市川市 鴻ノ台(国府台)
 あった鴻宮は、日本武尊(やまとたけるのみこと)が川を渡るとき、瀬踏みをして
 案内したコウノトリにすみかとして与えたのにちなむと伝える。
・埼玉県鴻巣(こうのす)市の氷川(ひかわ)神社や岡山県倉敷市琴浦の八幡宮
 別名を鴻宮(こうのみや)といって、コウノトリを神に祀ったと伝えている。
 神域の木にある巣に神が卵を呑もうと大蛇になって登ったところ、
 コウノトリが蛇を突き殺したので、新しく神として崇めたという。
・兵庫県豊岡(とよおか)市 鴻湯
、  足をけがしたコウノトリが治療しているのをみて発見したという。
 その挙動を神秘とした伝説がみられる。
*人間に身近な生き物は言い伝えをうみやすい傾向があるといえるだろう。しかし人間に好まれる生き物とそうでないものが わかれるのは面白い。

生物学的な説明は以下の通り。
狭義にはコウノトリ科の鳥C. c. boyciana1種をいう。全長約1.1m。全身白色で、風切り羽とくちばしが黒い。東アジアに分布。 日本では特別天然記念物に指定されたが絶滅した。その後トキとならび野生種の復活をめざす取り組みが行われている。
広義には、コウノトリ目コウノトリ科の鳥の総称である。大形で脚、くび、くちばしが長い。 鳴く器官が退化し、くちばしでカタカタッと音を出す。17種がアフリカやアジア南部を中心に分布する。
詳しくは鳥綱コウノトリ目コウノトリ科に属する鳥の総称で、 種としてのコウノトリCiconia ciconiaは、全長約1.15メートル。 英名をwhite storkというように全身白色で、風切羽(次列風切の外弁を除く) および初列雨覆(あまおおい)、大雨覆だけ黒い。 足は赤色。旧北区に分布し、大きさあるいは嘴の色の違った3亜種に分類される。

日本、朝鮮半島、中国北部、沿海州に分布するものは コウノトリC. c. boycianaで、大形で嘴が黒い。ヨーロッパ、北アフリカで繁殖する亜種は、 小形で嘴が赤く、シュバシコウC. c. ciconiaの名がある。中央アジアには、 それより大形で嘴の赤いオオシュバシコウC. c. asiaticaが分布。大陸のものは冬は中国南部、 インド北部、アフリカで越冬するが、日本のものは留鳥である。

日本では、かつて全国にかなりたくさんすんでいたらしいが、明治の中ごろから急激に減少し、 1956年(昭和31)には特別天然記念物に指定され、1958年の調査では兵庫県下に7巣15羽、 福井県下に2巣6羽が数えられるだけとなり、その後も減り続けて、現在は野生で繁殖するものはなく、 中国やロシアから冬鳥としてときどき渡来するだけである。
日本のコウノトリが急激に減少した原因は、 おもに狩猟による殺戮だが、絶滅するに至ったのは、第二次世界大戦後急速に コウノトリの生息環境が破壊されたことと農薬使用による水銀中毒であったり、 営巣木であるマツが伐採され、土地開発・河川改修で生息地が激減、彼らの餌となるドジョウやカエルなどの生物は水田から姿を消していったことによる。 1971年には、わが国最後の野生のコウノトリが兵庫県豊岡盆地で絶滅した。

その後コウノトリの保護増殖活動が展開され、1988-89年には旧ソ連から贈られたペアで 飼育下での繁殖に成功、以降も保護増殖の努力を続け、2002年(平成14)には保護下での飼育数が100羽を超え、 8月5日には兵庫県立コウノトリの郷(さと)公園[1999年開園、豊岡市]に野生のコウノトリが1羽飛来、 1年以上定着。現在も将来の野生復帰計画を推進中。
コウノトリの好む生息環境は、餌となる生物が生息できる水田や湿地が多い開けた所で、人家の近くでも繁殖する。 巣は高いマツなどの頂上につくられ、小枝を寄せ集めただけのものだが、直径1.5〜2メートルの大きさがある。

ヨーロッパのシュバシコウも工業化の影響で、 その姿をみられなくなった地方が少なくないという。東ヨーロッパではまだかなりの数が生き残っている。 1腹の卵数は3〜5個、抱卵・育雛は雌雄とも行う。
食物はおもに動物食で、魚、カエル、タニシやバッタなどの昆虫類を主食とし、 みつければ小形のヘビ、ネズミ、小鳥の雛なども食べる。

コウノトリ科Ciconiidae 6属17種 コウノトリ属Ciconia
トキコウ属Mycteria
スキハシコウ属Anastomus

セイタカコウ属Ephippiorhynchus
ズグロコウ属Jabiru
ハゲコウ属Leptoptilos

世界の温帯・熱帯に分布するが、アジア南部とアフリカにすむ種が多い。
一般に大形の渉禽(しょうきん)で、頸(くび)と足と嘴は長く、外形態はツル類に似ている。
だがツル類とは解剖学的特徴や習性の共通点が少なく、類縁関係はむしろ遠いと考えられている。
コウノトリ類の特徴の一つは鳴管が退化していることで、声を出すことはほとんどできず、 上下の嘴をたたき合わせて、カタ、カタ、カタッと連続して聞こえる大きな音(クラッタリング)を出す。 この音は繁殖期にとくによく聞くことができる。
繁殖期には、雌雄によるお辞儀のし合いをはじめ、コウノトリ類独特のディスプレーが演じられる。
食性は多くが動物食だが、ハゲコウ類の3種は腐肉を食べる。
下に湾曲した嘴のあるトキコウ類は、おもに魚食。上下の嘴を閉じてもすきまができるスキハシコウ類は、 食性も特殊化して大形のタニシを常食とする。
繁殖習性は、コウノトリとだいたい同じであるが、 トキコウやスキハシコウはしばしば数百羽以上の大集団をつくって繁殖する。ナベコウC. nigraやセイタカコウE. asiaticusは、 地方によっては岩棚の上に営巣することを好む。

余談だが、日本の無人宇宙輸送船HTVは「こうのとり」、「こうのとり2号」(2011年1月22日打ち上げ成功)となづけられ、スペースシャトル 退役後も宇宙ステーションへ大型機材を運べる唯一の運搬手段となっている。スケールの大きなコウノトリである。

参考資料
・日本大百科全書 (執筆者:小島瓔(民俗)森岡弘之(生態) 小学館)
−コウノトリ誕生 (但馬コウノトリ保存会・神戸新聞社編1989・神戸新聞総合出版センター)
−週刊 日本の天然記念物22 コウノトリ (池田啓総監修 2002・小学館)
−コウノトリ大空に帰る日へ (加藤紀子著 2002・神戸新聞総合出版センター)
・大辞泉 (JapanKnowledge)
・eプログレッシブ英和中辞典 (JapanKnowledge)


 
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