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パエトーン phaethon >>関連項目一覧


ヘレネス(ギリシャ)神話の太陽神ヘリオスとクリュメネー(アポロンとニンフのクリメネ)の息子。名前は「輝く者」の意味。
父の名をとりヘーリオス・パイトーンともいった。

パエトーンには有名な物語があり、若い少年パエトーンはある朝、父の馬車に乗って天にのぼった。
あまりに高くのぼったので奈落に落ちたとも、エリダヌス川に落ちたとも、ゼウスの電光にうたれたともいわれそれで大火がおき洪水でなければ 消せなかったという。
のちには、太陽の車が近くによりすぎ、すべてを焦がし大火になったのでゼウスが雷霆で撃ったのだという。
妹である太陽の娘たちはエリダヌス川(ポー川)の川べりで泣き悲しみ、その涙が琥珀になったという。さらには妹たちはポプラの木となり、 川とともに天の星座、エリダヌス座となった。
(太陽の娘たちはヘリオスを参照)


またブルフィンチの伝える話ではパエトーンがアポロンの息子だと信じている、と友人が笑うので悔しく、恥ずかしくなり母に証拠を求めた。
母クリメネは隣の太陽の昇る国(インド)を訪ねるように言った。太陽の宮殿を訪れ、父ボイポス(日の神)・アポロンに会い、 自分が息子である証拠がほしいと言った。
アポロンは「お前の母のいう通り、私の息子だ。望みのものがあれば何でも与えよう」と誓った。 パエトーンは太陽の二輪馬車を1日だけ御させてほしいと言った。アポロンは何度も戒めたが聞き入れない。 アポロンは神である自分ですら難しいことを語る。ゼウスですら乗れない。 昇る時は中々登れず、夕方は急な下りで気をつけなくてはいけない。他の星も運行していて振り落とされる恐れがある。 12宮の動物たち、牛の角、獅子、カニやサソリの間をとおらなければならない。鼻や口から炎を吐き、胸いっぱい焔にしている馬も危険なのだと。
しかし聞き入れないパエトーンに仕方なく助言をして馬車の手綱をとらせた。
馬はいつもより軽い馬車に気づき、無茶苦茶に走りパエトーンは当然制御できず、また眼下の世界の広さにも驚き何もできず、 天の星座や地上をさんざんに焼き焦がしてしまった。
ギリシャの河も、バビロンのユーフラテス河も、インドのガンジス河も干上がった。エジプトのナイル河は砂漠に頭を隠したので、いまでもそうなっている。
地の女神の救いを求める声にゼウスはすべての神々を集めたのち、塔の上から雷光の弾丸で馬車を打ち砕いた。 そしてパエトーンはエリダヌス河に落ちた。

クレタ島では太陽の車を御するのを失敗したのはアデュムノス(アテュムニオス)だという。

また、太陽のように輝く小さな天体が「パエトーン」と呼ばれることもあった。 アプロディーテーに一番近い星ヴィーナス(金星、愛の女神の星)がそう呼ばれたり、のちには木星や土星もパエトーンと呼ばれたことが あるようだ。

美少年ネーリーテースがパエトーンの分身でポセイドンの恋人だという物語もあるという。

アポロドーロスによると「ヘルメスの子ケパロスとエーオース(曙)の子ティトーノスの子パエトーン」とあげたものしかないようである。

余談だが山岸凉子氏のマンガ(コミック)「パエトーン」がパエトーンの物語とチェルノブイリ原発事故を取り上げており、この事故当時話題となり、 2011年の福島原発事故でまた話題になったようだ。

参考資料
・ギリシャの神話 神々の時代 (カール・ケレーニイ著)
・ギリシャ・ローマ神話 (ブルフィンチ著 岩波文庫)
・ギリシャ神話 (アポロドーロス著 岩波文庫)

 
関連項目一覧
ヘレネス(ギリシャ) 【文化地域項目】
ヘリオス 【ヘレネス(ギリシャ):太陽神】
アポロン 【ヘレネス(ギリシャ):太陽神】
星、星座 【大項目】

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