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カツレイ 割礼 かつれい サーカムシジョンcircumcision(英語) >>関連項目一覧


きわめて古い時代から、世界の多くの国、地域、文化圏で見られた儀式・風習・習慣・宗教儀礼のひとつ。
諸民族に広く行われたが、現在 よく知られるのはユダヤ教徒、アラビア・アフリカの諸部族間で行われるものがある。
性器の一部、男子の陰茎包皮または女子の陰核・小陰唇を儀礼的に切除、切開、その一部を切り取る風習・儀礼で、宗教的には、清め・奉献・契約の印・成人の証明などの 意味づけがなされるようだ。宗教上の理由、儀式または成年通過儀礼、その他の理由で行われる。身体変工の一つ。

地域・文化圏としては、アラブ系諸民族、若干のアフリカ系民族、 エチオピアのキリスト教徒、オーストラリア先住民、マレー人、カリブ人、南アメリカ先住民、ユダヤ教徒、 イスラム教徒、フィジー人、サモア人などが挙げられる。
行われない地域・民族としては、インド・ヨーロッパ語系、モンゴル語系および フィン・ウゴル語系諸族などがある。

割礼の意味・目的については、血と生命の供犠、神との契約の「しるし」の付与(ユダヤ教徒の場合)などのほか、 忍耐力を試す手段、結婚の準備、性器の聖化、衛生上の理由などさまざまの解釈があり、一定していない。しかし、 幼児期に行われようが少・青年期に行われようが、基本的には入社(門)式、成人式の意味をもつ。すなわち割礼は、 個人のある集団・社会への加入またはある身分・地位の獲得を儀礼的に表現し、彼を正式の成員として社会的に承認する行事であるとみられる。

割礼を行う年齢は、ユダヤ教徒では幼児(生後8日とも)に割礼「契約(ブリット)」を行う。アラブ諸族は、生後7、14、21または24日目に、 ペルシア(*イランか?)のイスラム教徒は3歳か4歳のときに、割礼を行う。エチオピアでは6、7歳または8歳のときに割礼を行った。
アフリカでは若干の部族がユダヤ教徒の規則に従っているというが、 大部分は生後30日から60日の間に実施した。
古代エジプトでは紀元前BC4000年の、頃すでに割礼の風習があり、男子は6歳から12歳の間にこれを受けたという。
フィジーやサモアでは7歳で行った。
オーストラリアのカラジェリ人は、男子の12歳ころ、成人式の一環として割礼を施す。 年長者に連れられてホルドを離れ、長期間、幾多の試練を経て、年長者の男性たちにより割礼されるという。 割礼は聖なる怪物ブル・ローラーの歯の傷痕であるとされる。金属製よりも石製の小刀が使用されることが多いという。

ユダヤ教徒の詳細を述べると、割礼の厳守で知られており、「旧約聖書」の創世記によれば、アブラハムは神との契約のしるしとして、 彼が99歳、その子イシマエルが13歳のとき、一家の男性をあげて割礼を行った。
このとき神は、イスラエルの民はすべて 生後8日目に割礼を行うべきことを要求し、これに違反する者は契約を破るものとした(17章9〜27)。
以来「アブラハムの契約」は 代々子孫に義務づけられ、ユダヤ教徒の男子は生後8日目に、健康上の理由がない限り、安息日と否とにかかわらず、 割礼を行うものとされた。
割礼「契約(ブリット)」を受ける幼児はまず預言者エリヤの情熱を象徴する「エリヤの椅子」に乗せられ、 ついで契約人の膝に移されて割礼を受ける。この間契約人は、泣き叫ぶ幼児を押さえていなければならない。 式後、幼児にヘブライ語の名前が与えられる。最近では衛生上の理由から、手術は病院で済まし、祝宴を家庭で行うようだ。

キリスト教では割礼の実施に宗教的意味を認めず、これにかわってパウロが主張した「霊による心の割礼」 (「ローマ人への手紙」2章25〜29)を重視するともいう。しかし神学的見解は諸々あるようで、行うかどうかは宗派などで異なるようだ。

余談だが、 遊牧民から世界的トップモデルになったワイス・ディリーの自伝がベストセラーになり2010年12月、映画も公開された。 彼女が3歳のときにソマリアの割礼習慣としてFGM(女性性器切断)をうけたことなどが語られている。

参考資料
・日本大百科全書 (執筆者:佐々木宏幹 小学館)
−竹中信常著『宗教儀礼の研究』(1960・青山書院)
−長谷川真著『ダビデの星――ユダヤ教』(1969・淡交社)
−ファン・ヘネップ著、綾部恒雄・裕子訳『通過儀礼』(1977・弘文堂)
・大辞泉 (JapanKnowledge)
・eプログレッシブ英和中辞典 (JapanKnowledge)


 
関連項目一覧
成人式、成年式 【儀礼、儀式、習慣】

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