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成人式、成年式 (通過儀礼 儀式、習慣) >>関連項目一覧ある年齢に達した人間を、子供から一人前の人間として社会的に認めるために行う種々の儀式。 世界の多くの文化圏で、子どもから大人、成人になる「通過儀礼」が存在する。 日本では現在、成年式、成人式ともよばれる。それまで子供として扱われていた個人が、一人前として社会から 認められる儀礼で、 通過儀礼のなかでももっとも重要かつ多彩な性格をもっている。 世界の多くの国、文化圏では成人と未成年では様々な権利や義務などの違いがみられる。規定している年齢も違う。 およそ16歳、18歳、20歳などが多いだろうか。 日本の現代社会で行われているものは、伝統的なものとは普通関係ないが、地域によっては神事などを取り入れた行事を 行うものもあるようだ。(時期については農村で小正月[1月15日]に行われていたものが踏襲されたようだ) 一般的に女性は晴れ着、着物を着て記念写真を撮ることもあるようだが、 男性が紋付き袴でそのようなことをするのは少数派だろう。 日本では武家社会時代の男子の元服(15歳)などが過去みられた成人式といえるだろう。 また農村では米俵約70kgを持てる(男子)、田植え2反[20ha]の広さできる(女子)と労働力の一人前が 試されたようだ。 大人と子どもでは髪型や名前が異なった。 武家の元服以前は「加冠」(かかん)という儀式があった(または初冠[ういこうぶり])。 奈良・平安時代から中世の男子の成人式で、一五歳前後の男子が、衣服を改める、髪を結う、冠を着ける、幼名をやめる、烏帽子をつける等が行われた。 以下は世界の文化学的な捉え方をのべる。 成年式は成熟祝いの場合と入社式(イニシエーション)の場合とを区別があるといえる。前者は個人中心で、 家族的かつ公開的に行われるものをさし、後者は成人の年齢に達した男子(女子)の若者組、娘組、 男子結社などへの集団的加入礼を指す。女性の場合は成女式とよばれることもある。 一般に男子の成年式は集団的に行われることが多く、 女子の成女式は個人的・家族的である。成年式は男子では生理的成熟とかならずしも一致しないが、 女子では初潮の時期と一致している。 成年式を通過することによって、個人は初めて一人前の成人としての権利を獲得し、義務を負うことになっている。 いずれの社会でも成年式はきわめて重視されており、これまでの生活からの別離と新しい身分の獲得が、 「死と再生」、生まれ変わり的なモチーフによって示されることが多い。 成年式は典型的な通過儀礼であり、 それまでの身分からの分離、新しい身分を獲得するまでの過渡期、 新しい身分への統合期、という三つの段階からなっている場合が多いようだ。 ・太平洋諸島地域のバヌアツでは高い櫓(やぐら)から命綱をつけて飛び降りる、いわゆるバンジージャンプ様の度胸試し的儀式 「ナゴール」がある。 ・アフリカのマサイではライオン狩りを行ったものを一人前、勇者とする習慣がある。 ・パプワ・ニューギニアではサメを素手で捕らえるというものがあるようだ。 ・インドのある民族では、儀礼的ではないが、伝統的な農作物の栽培技術(成長点の部分で株分けする)を一人前になる時期に伝える、教えるなど して独り立ちさせる。 西アフリカのメンデ人のポロとよばれる成年式(加入礼)では、学齢期の少年が一定数に達すると、 少年たちは同族の長老によってブッシュの中につくられた学校へ連れられていく。少年の腹の上に ニワトリの血が入った袋が巻き付けられ、学校の柵内に投げ入れられるとき、槍 で袋が突かれて血が流れる。 少年たちは死んで霊界に入ったものとみなされ、これが分離の儀礼を 意味している。 学校にいる間、少年たちはメンデ人の倫理、道徳、儀礼、生活技術など、 成人男子が知っておかねばならない知識を学ぶ。訓練は苦しいが、 次々と宴が繰り広げられ、楽しい面もある。 少年たちは割礼を受け、 性教育も施される。(この期間を過渡期と考えることができる) 訓練を終わった少年たちは村へ帰され、 名前が変わり、家族や知人に会っても知らないふりをする。「再生」を象徴しており統合期にあたるといえる。 このようなの成年式には、それを受ける個人が、この儀礼を期して ・社会の一人前の成員になること ・その能力を試すための一定の試練を受けること ・結婚が許されること という三つの重要な側面をみることができる。 前述したが日本では成年式は一般に15歳から18歳までに行われていた。 貴族社会では加冠(かかん)、元服(げんぷく)等とよばれ、士族社会では烏帽子着(えぼしぎ)、 農民の間では男は名替(ながえ)祝い、女の場合は鉄漿付(かねづけ)祝い、ユモジ祝いなどとよばれた。 日本では、何をもって「一人前」とするかについて、 田打ち、田植、草刈りなど、成人が1日にできる仕事の量が村によって定まっており、 成年式では各人の能力が試された。小正月(1月15日)に行われたようだ。 生産能力、生業が一人前にできることは重要なことで、 インドのある民族では、1000年間ある植物を重要な食物にしてきたが、その植物の株分け、農耕生産できることが 一人前となる重要な要素である。 インドネシアでも伝統的狩猟生活をしている社会では子どもの成長にあわせ、徐々に狩りに同行させたりして 経験や知識をあたえるようにする。本格的な成人には特別に隔てられた小屋で一定期間すごすなどの儀礼がある。 日本の現在の「成人の日」(1月15日、2000年からは1月第2月曜日、祝日) は、終戦直後、若者を励ますため各地で行われたものが全国的になったともいう。 なぜ集団でこのような型にはまった式を行うかは、 いかにも日本らしいというほかない。 2000年代以降、一時期一部の荒れる成人式を報道する風潮があったが、 特に2011年の震災後は地域との関わりやおしきせでない成人式に注目するような報道にきりかわったようだ。 報道関係者の成人式が必要だ。 参考資料 ・日本大百科全書 (執筆者:綾部恒雄 小学館) −「通過儀礼」 (ファン・ヘネップ:著 綾部恒雄・裕子:訳 1977・弘文堂) ・大辞泉 (JapanKnowledge) ・eプログレッシブ英和中辞典 (JapanKnowledge) ・日本国語大辞典 他 関連項目一覧
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