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雷 稲妻 サンダー、ライトニング Thunder >>関連項目一覧


雷(かみなり)は古くから農耕、雨、またその他天候との関わりから、また嵐や落雷など自然災害として人類に記憶されてきた。 雷も地域によって発生の頻度は差があるが、世界各地に雷の神格化、神話、伝説がみられる。 天に轟く雷鳴や稲光、雷光、それに伴う嵐、激しい落雷は現代でも自然に恐怖する人がいるのだから(実際に死亡者もでる) 古代においての影響がうかがい知れる。



雷の発生日数
年間雷雨日数の世界分布は、低緯度の陸地、とくに南アメリカとアフリカでもっとも多く、 年間200日に近い地方がある。東南アジアがこれに次ぐ。日本では、1998(平成10)〜2002年の5年間をみると、 北海道地方各地では年間10日以下でもっとも少なく、関東、近畿、九州地方で10〜30日、 北陸地方では40〜60日ともっとも多い。北陸で年間の雷日数が多いのは冬季の雷が多いためである。 たとえば金沢では、冬季6か月間の雷日数は年間のそれの60%にも達している。

以下、世界各地の神や伝承と雷関係をしるす。
主神的な神の武器とされたり、武器の名前と関わりが多いのがユーラシア全体にみられる特徴だろうか。
一方、同じ文化圏に近いシベリア-北米アメリカ方面では雷の鳥サンダーバード的な伝承が多い。
雨がないエジプトでは雷の神格はないようだ。まだ雨季があったかシュメール系には雷関係がある。

・ヘレネス(ギリシャ)
主神としての力の象徴に王笏、武器として雷、雷霆(ケラウノス、ゼウスの雷)を持つゼウスは有名。

・ローマ
ゼウスの神格をとりいれたユピテル(ジュピター)がいる。

・北欧、ゲルマン
雷神トール(ソール)が有名。強力な魔法の槌ミョルニルは雷霆をあらわすようだ。
「ユールの丸太」の灰は病気をなおし雷を防ぐと信じられた。
ドイツ系のヴォーダンは稲妻や雷の霊を支配する神。

・ケルト
有名な神々や伝説的な剣の名前が稲光、「硬い雷」「激しい雷」を意味する語であるという。
エクスカリバーカラドボルグ ゲイボルグ
ブリューナク 投げると白い光、熱、稲妻とともに自動的に敵を貫く。
※どんだけ雷系武器が好きなのでしょう。
・インド/ヒンドゥー教
天空を支配し、雨と雷(ヴァジュラ)を操るインドラ神が有名。ヴァジュラは武器とされる。棍棒状の槌、ハンマーの形状、 またはチャクラムの形であらわされる。
ナーガラージャ 雨を司る。稲妻によって火災がおこらないように注意している。
(武器 ヴァジュランダ(ヴァジュラダンダ 雷の牙)

・ロシア
イリヤ(英雄イリヤ・ムウロメツ)は雷を手放さない」というほど雷が多い季節がある。

・アルメニア
ヴァハグン 太陽、稲妻、火と結び付けられた神格。

・エストニア
ユウコ 天空神。名前は「老人」の意。「雷の神」ともいわれ、稲妻の神格も持つ。

・スオミ(フィンランド)
至高神、雷神ウッコ 雨、嵐を司る。

・中国
一般的には「雷公」が雷神である。また古代の最高神の上帝の神性は雷であるという。他に「雷部」といわれる多くの神々がいる。 古代の神、道教神、民間信仰の神と多様である。雷帝、九天応元雷声普化天尊は雷部二十四神を従えるという。
呪術的な模様「雷文」や雷が落ちて石になった「雷石」伝承、また雷(の怪物)を斬ったという伝承などもある。
(こっそり 雷公鞭

・アイヌ
カンナカムイ 天上の主神的存在。竜神、雷神
人食い刀エペタム 稲妻の様な光をだしたり、光の尾をひきながら飛んだりする。
クトネシリカ(刀) 彫りこまれた夏狐の化神、雷神の雌神・雄神、狼神などが憑き神になっていて危機の時に力を発揮し敵を刺し殺すという。

・日本
日本では「雷=神鳴り(かみなり)」あり、神のおこしているものという名前の由来。鳴る神、いかづち(厳つ霊)とも。また雷光も「稲妻(イナズマ)」「稲光(いなびかり)」で 米作、豊穣との関係性がある(雷雨等の雨の恵みは稲作に欠かせない)。 ここから落雷と植物の成長の研究もされ、「落雷があったところはキノコがよく育つ」という言い伝えからキノコで実験し 人工的な落雷(電流)で菌糸が切れるとより密集して収穫が増えるという成果もある。
雷神としては 国宝「風神雷神図」や 、雷神・菅原道真が有名。また日本神話では黄泉の国のイザナミの体に雷がとりついて話がある。
1000年続くという京都の葵祭りの祭神のひとつ賀茂別雷神社の神も雷神。
愛宕(あたご)権現の若宮の祭神は雷神(いかずちのかみ)で、防火の神として信仰。
名前に雷のつく建御雷神、武甕槌神(たけみかづち)の神は剣神で、剣と雷の関係はケルト系伝承にもみられる。
中国にもあったが「雷を斬った」という刀の伝承(雷切)もある。
神々が多様すぎてよく分からないが、記紀神話や古代の神話文献、地域の神社、民間信仰もふくめて多数いるようだ。
もっとも一般的には「かみなりさま」という呼ばれ方、神格が最も日本らしいかもしれない。「おへそをとられる」という迷信も有名。
平安時代などは陰陽道的な避雷、カミナリよけの儀式、呪術もあった。「くわばら、くわばら」という一般的な まじない もある。
(武器 名前だけ 雷上動

子供の名づけのおわらないうちに地震、雷があると子供によくないとか、不祥事があるとか口がきけなくなるという伝承がある。

・シベリア
オロチ人:シャーマンの守護霊が雷鳥(サンダーバード)。
シャーマンは脱魂状態に入り、守護霊の雷鳥がシャーマンに化身して天空へ飛行するとされ、悪霊に奪われた病人の霊魂を霊界において シャーマンが取り戻すことによって、病気が治癒すると信じられている。
*シベリアでは乾燥のため雨をともなわない雷、ドライ・ライトニングがみられる。

・北米アメリカ先住民族
ダコタ、スー民族:ワキヤン(主神の使いの雷鳴や雷を生む鷲、巨鳥
スー民族の男性は、雷や雷の霊を予見するとヘヨカHeyokaというシャマン的、呪医的な立場になる。
ダコタ、スー民族:ハオカー 雷神。 雷の鼓を風で打つ。
ティン・ネアー(アパッチ)民族:ツィ・ダルタイ 雷にうたれた杉や松を材料に彫られた小さなお守り人形。
トリンギト人:雷は雷鳥(サンダーバード)の羽ばたきによっておこるとされている。
雷鳥の背中には大きな湖があり、そのため、雷鳥の羽ばたきにより、雷に伴って多量の雨が降ると信じられている。
マンダン人、ヒダツァ人:雷は雷鳥の羽ばたきによっておこる
ミウォク人:大カケスの一種を雷鳥サンダーバードとしている。

ワシントン州地域:兄弟が呪医になるため精霊から力を得た。(火の精霊から稲妻、別の精霊から投石と雷鳴の力)
エヌムクラウ 雷神 雷鳴】
カプーニス 雷神 稲妻】


・中米メキシコのインディオ諸族
雷神あるいは稲妻の神を信仰

・南米インカ
主神ウィラコチャ 頭に太陽を載せ、手に稲妻を持ち、雨の意味をもつ涙を目から流す姿で表される。

・マレー半島のネグリト系の民族
雷は神の不機嫌や怒りの表れ(殺人,近親相姦,動物虐待,鏡の中の自分の顔を見て笑う,神に捧げるべき血を吸ったヒルを焼く) などの行為に対し雷、落雷がおこるとする。
激しい雷には、危険を避けるために、神に対し雷がやむように祈りと血を捧げることが必要とされ、 そうしないと落雷によって木が倒され、洪水がおこり、人々は押し流されてしまうと信じられている。

・ボルネオ島 プナン人、ガジュ人
マレー半島のネグリト系の民族と同様

・オーストラリア先住民族(アボリジニ)
北部オーストラリア、ムルンギン民族:虹蛇ユルルングルの声は雷だという。




・アフリカ
ヤオ民族:星を食べる神が、虹の弓に稲妻の矢をつがえて、星を射落として、煮て食べていた。
アバルイア民族:創造神ウエレ・ハカバが稲妻の元になる赤い羽根の雄鶏を造った。

ナイロート語族:ディンカ民族 ニアリチ神、精霊デングが空や雷・稲妻の神格。

・シュメール・バビロニア
最強神マルドゥークは手に雷を持っている。

・カナーン(フェニキア)
レシェフ(レセフ) 稲妻と悪疫、疫病の神。
シュメール・バビロニアの疫病神ナムタルと同一視。
アモリ人には地獄や地下の神、戦争の神、雷雨・嵐・災害の神。

・イスラーム
ブラーク(ボラク)  名前は「稲妻」の意。女性の頭に体が馬、尾がクジャク。 ムハンマド(マホメット)が昇天した夜、この動物にのっていったという。

・その他
天使ラミエル(ユダヤ) 雷を司るエノク書にでてくるグリゴリ。
悪魔フルフル(ヨーロッパ悪魔学?) 召喚した者の命令で稲妻・雷を起こすこともできる



特定の石や樹木をそれぞれ雷石、雷木として、聖なるものとみなす習慣も多くみられる。落雷の跡の場所を特別視する場合がある。

<その他 日本>
雷が自然現象とされなかった段階では、人々は雷は天にいる神の荒々しく動き回る姿と信じ、 落雷すると雷獣というものになったとして捕らえようとして追い回したなどの記録がある。
岡山県には、昔、雷の害があまりにひどいので、雷除(よ)けの祈祷をしたところ、夕立なかばに松の木に落雷し、 怪獣がうろついていた。それを僧が捕らえて、以後けっして害をせぬとの誓約をさせて放してやった。そのおかげで この村は落雷などの被害がない、と伝えた所がある。
古典の記載によると、古くは小童や蛇の形をとって現れると考えられた。
また菅原道真(すがわらのみちざね)を祀る北野天神を中心とする 御霊(ごりょう)信仰の広まりがあり、これとの結び付きで雷神信仰は天神信仰に吸収されていった部分もあるようだ。

雷はもともと農耕生活、稲作に縁の深いもので、ことに、生育中の稲が雷の訪れによって穂ばらみするとの考え方は全国的であるようだ。 電光をイナズマとよぶのは、「稲の夫(つま)」の意という。稲が実る時と雷雨の時期の重なりから考えられたという。

年越(節分)のときの豆をとっておいて、初めて雷の鳴ったとき食べると、 夏病みしない、などというのもその類である。

冬、雷が鳴るとその年は豊年と伝える地方もあり、 雷の落ちた田には青竹を張って祀る地方もあった。茨城県下では、苗代のころ雷が鳴ると、割り竹をたたいて追い払う。 これをカンダチオイ(神立ち追い)というが、神の示現の素朴な姿を思わせるものがある。

宮本武蔵が亡くなった時は晴天に雷鳴がとどろいたという話がある。

豊作をもたらす反面、災いを及ぼすことの多いこうした霊威に対しては、人々の対応には矛盾したものがみられる。 ある土地で「元日に雷が鳴ると米・黍(きび)熟す」と伝え、別の土地で「元日に雷あれば人災あり」と伝えたのも、 その例といえる。雷を除ける呪い(まじない)に、蚊帳に入るとか、線香を立てるとか、 草鞋(わらじ)を片足つくってそれを捨てるとか種々の法があったが、「桑原桑原(くわばら、くわばら)」と唱えるのもその一つで、 この呪文はすでに謡曲「道成寺」、狂言「神鳴(かみなり)」にある。このことばの由来は、 菅原天神の領地のあった地名からきたとする江戸時代中期の小野高尚の「夏山雑談(なつやまざつだん)」の解説に従うことが多いが、 確かではない。
戦国武将、上杉家の鉄砲隊は直江兼続が力を入れ1000挺を擁し、通常5-15匁だが30匁以上を「上杉の雷筒」と呼んでいる。

各言語での「雷」を表す語(音[雷鳴]、光[稲光]の別、あるいは両方、その他)
・かみなり(神鳴り、の意味 日本)
・いかづち(雷神の意味、「ち」は霊的なもの、精霊か。 日本) ・サンダーthunder (雷神ソール[トール]から 古英語þunor 古ノルド語þorr Du. donder, O.H.G. donar, Ger. Donner )
・ライトニングlightning (雷光、稲妻。13c世紀頃の記録がみられる。make bright 英語)
・ブロンテース ()
・ヒボラトゥ(雷の意味 バレッセ語 アフリカ:コンゴ:イツーリ地域)


(随時更新)

 
関連項目一覧
エヌムクラウ 【北アメリカ:雷神】
カプーニス 【北アメリカ:雷神】
カンナカムイ 【アイヌ:竜神、雷神】
ニアリチ 【アフリカ:神:天空、雷】

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